あだち区民大学塾講座 講座開催報告

足立の伝統工芸 ~匠の技~

好評のうちに終了しました

講座開催報告

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                                                  【講座開催日】2019年11月15日・22日・29日

11月15日、22日、29日 足立区伝統工芸振興会会員で 東京打刃物・江戸象牙・江戸刺繍の3人の名人技をこの講義ではたっぷり堪能して頂きました。
                            
           

第1回目は、川澄巌 氏  東京打刃物(花鋏・植木鋏)                    
東京都伝統工芸士・東京マイスター・現代の名工
創業100年の伝統を守り、特に華道家などに生花用の鋏の分野で卓越した技能者として厚生労働大臣より「現代の名工」として表彰された名人。“ちょっとこの音を聞いてみて”と鋏の閉じ開きの音の聞き分けを皮切りに講座が開始されました。創業当初は医療用の洋式鋏を造っていた先代の親父のもと独学で学んだ。ある日親父が手掛けなかった分野の鋏にも取り取組み、お花の先生から頼まれた生花用の鋏を工夫して作ったところ、「よく切れるし、使っていて手が痛くならない」との評判を得た。その後「国治の鋏を使うと手が痛くならない」と、口コミで広がっていき、よりよいものを作るための創意工夫を繰り返し、いい鋏の作り方を習得していった。2代目として、「國治」を継承し足立ブランド認定や東京都のチャレンジ大賞優秀賞受賞。お花の鋏の形は変えられないけれど、盆栽用の鋏はよりよく切れ、使いやすくできる余地はまだありそう。若い人にも道具の大切さについて伝えていけたらいいね。体の動くうちは作り続けるよ!と。ものづくりに対する意気込みを語ってくれました。



第2回目は、片山 紀史夫 氏 江戸象牙(根付・装身具)                  
東京都伝統工芸士・東京マイスター
江戸象牙挽物・細工は、希少素材である像牙の表面を削り細かい彫刻を施したもので、耐久性があり細工しやすく洗練された気品のある光沢と滑らかな肌触りと艶の美しさから、茶道における茶匙、茶蓋に始まったといわれ、江戸時代中期には根付け、髪飾、三味線撥などにも用いられ、武士から町人に至るまで多くの人々に愛用されるようになりました。象牙はリフオームや磨き直しをして、代々使える一生ものとして長く親しみ楽しんで頂ける逸物です。美しい模様が楽しめる象牙の帯止めは、女性の美しさを引き立てる素材として、古来より伝統的に愛用されています。片山さんは素材を厳選して、掘り、磨き、仕上げの全工程を一貫して一人で行って居り、現在、日本で唯一の象牙装身具製作者として、その卓越した技能は東京都伝統工芸士、東京マイスターにも認定されています。

 

第3回目は、竹内 功 氏 江戸刺繍(帯・着物)                     
東京都伝統工芸士・東京マイスター・現代の名工
江戸刺繍は、地域のブランドとして足立区・新宿区・江東区などでも制作されており、装飾としての刺繍は、平安時代以降に見られ、公家社会を背景に絹糸、本金糸、本銀糸などを用いてその豪華さを競った。
江戸時代に入ると町人の衣装にも刺繍がほどこされる様になり江戸刺繍として栄えました。江戸刺繍は、図柄を置くときに、空間を愉しむような刺繍の入れ方をするのが特徴です。糸の太さ、撚りの甘さなどを考えながら自分で糸を撚り、色とりどりの糸を使いながら緻密に模様を表現して、まるで精密画を描くように仕上げていきます。針と糸で、いかに一枚の布地に命を吹き込むか、ひと針ひと針、丹念に模様を表現する刺繍は、華やかさとはうらはらに、地味で根気のいる繊細な仕事の出来栄えと重厚な見ごたえは作風にも生かされ「現代の名工」として数々の伝統工芸展でも入選されて居り、講座ではそれらの匠の技を体感して頂きました。

 

最後に、それぞれの講師からは、伝統継承の大切さを熱く語って頂きましたが、将来に向けての後継者問題等の課題も投げかけられました。                            (金子勝治)


        

撮影現場↑