【講座開催日】2023年7月4日・11日・18日

   7月4日・11・18日(火)の3回にわたり開催された。講師は元遠藤周作「からだ番」記者、「遠藤ボランティアグループ」代表の原山建郎氏。受講申込者40名、受講者33名、延べ93名であった。

                       

◆第1回 夫人が支えた「夫の病」 患者をこれ以上苦しめないで
 21歳、肋膜炎を発症、29歳、仏留学中に肺結核になり1952年に帰国した遠藤さんは、1955年「白い人」で芥川賞を受賞する。32歳で結婚後、1968年に肺結核再発、3年間の入院中3度の大手術をした。危機を乗り越えるも7本の肋骨と片肺を失う。輸血でB型肝炎を患い、その後も糖尿病、高血圧症、腎臓病等、73歳の帰天まで病に苦しめられた人生だった。「病い」とは何か?作品のテーマとその背景にある彼の病などについて学びを深めた。
 1982年、遠藤さんは連載エッセイ「患者からのささやかな願い」を自ら新聞社に持ち込んだ。医学は科学であると同時に人間学でもある。苦しんでいる患者の孤独な魂を労う専門家としての傾聴ボランティアや臨床宗教師、瞑想室が病院には必要だと考え理解を求めた。

                       

◆第2回 患者からのささやかな願いを「良医」に訴える 東大病院の「入院案内」が変わった
 連載エッセイの2か月後、次の6項目の願いを寄稿する。①患者の背景にある人生を考えて ②患者は普通の心理状態でないことを知って ③無意味な屈辱や苦痛を与えないで ④入院患者の夜の心理をもっと考えて ⑤心療科の医師を医療スタッフに加えて ⑥患者家族のための宿泊所や休憩所を作って と訴え、医者と苦しむ患者との人間関係は、愛が基調にあってほしいと願った。
 1986年、遠藤さんの助言で東大病院の「入院案内」が変わった。ひらがなの優しい語りかけ口調、禁止口調を避けて患者の不安を和らげる工夫がなされた。新たに「医学部付属病院としてのお願い」と「インフォームド・コンセント(医師と患者の信頼関係を保つうえでの薬)」を加え、患者の権利と義務を伝えるものになった。

                       

◆第3回 心あたたかな医療キャンペーンを引き継いだ女性たち
 1982年、新聞の連載エッセイに読者から大きな反響があり、遠藤さんの呼びかけで集まった6人の主婦を中心に、患者の愚痴や嘆きに耳を傾けることを目指すボランティアグループが誕生した。遠藤さんは「知恵のない善意は相手の心を傷つける(河合隼雄)」の助言を胸に心理学を学びながら傾聴ボランティアをしてほしいと強調した。
 また一方で、遠藤さんとの関わりや遠藤さんが発する魔法の言葉をきっかけに壮大で困難な新しい道を切り開いた人たち、在宅ホスピス医師、肛門科の女性医師、在宅看護ナース、対人援助職トレーナー、視覚障がい者サポートなど、遠藤さんが信頼してやまない真のプロフェッショナルの女性たちである。今もその彼女らに遠藤さんが訴えた心あたたかな医療キャンペーンはバトンパスされている。


アンケートでは
・深いテーマに遠藤さんの人生、人となりを更に知ることが
  でき幸せだった。
・原山先生のすばらしい教材、正確な時間、温かい会話の中、
  大きな足跡を残した遠藤さんの医療実践的活動に感動した。
・80代に入り入院も経験し、有意義な講座だった。
・ボランティア活動に生かしたい。
・心身が弱った時も原山先生の温かな言葉に会いたいと思い、
  またホームからいつでもいつからでも再出発したいと思えた。
・感動の講義をひたすら聞き、友人とまた資料を読み直して
  この大きなテーマについて話し合いたい。
・区報の案内だけでは講座のイメージがつきにくい、内容が
  分かるようにしてほしい。
・天候に左右されないズームの併用も企画してほしい。
 
などの意見が寄せられました。
                    (板部 裕子)



   

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