【講座開催日】2023年10月15日・29日・11月5日

   10月15・29日・11月5日の毎回日曜日に3回にわたり生涯学習センター5階研修室1において開催された。講師は森鷗外記念会常任理事の倉本幸弘氏。応募者は49名・受講者は41名・出席者は第1回39名・第2回37名・第3回34名で累計110名であった。

                       

 第1回は「森鷗外と夏目漱石<「猫」の家>」で、「猫の家」が紹介された。明治23年(1890)現在の文京区向丘2-20-7に森鷗外は居を構えた。その後現森鷗外記念館のある文京区千駄木1-23-4の「観潮楼」に移った。向丘の家には明治36年(1903)夏目漱石が住むことになり、「猫の家」といわれ現在明治村に保存されている。明治40年(1907)漱石は漱石山房(新宿区早稲田南町7)に移り住んだ。その後、鷗外の1862~1922年の60年と、漱石の1867~1916年の49年の人生を対比した年表で紹介された。子供時代1969年に漱石は浅草三間町にすむが、1872年に鷗外は向島小梅村に住み、隅田川を挟んで対岸に住んでいた。鷗外は生涯官僚を貫き、漱石は1907年に東大を辞し、朝日新聞に就職する。1884年鷗外はドイツに留学し、1900年漱石はイギリスへ留学した。1910年鷗外は「青年」を、1908年漱石は「三四郎」を発表した。1890年鷗外は「舞姫」を、1914年漱石は「こころ」を発表した。二人の生涯を通じて「交差する二人」の様子が紹介され

                       

 第2回は「『青年』と『三四郎』」で、まず「三四郎」の内容が紹介され、熊本育ちの小川三四郎と里見美禰子のプラトニックな恋愛が1908年に朝日新聞に連載され評判となった。それに刺激されて鷗外は1910年「青年」を「スバル」に連載した。作家志望の小泉純一と坂井夫人れい子の恋愛を描き、両作品とも青春小説の代表作品となっているが、恋愛の内容は対照的であった。「青年」は途中で終わっており未完成と言われている。

                       

 第3回は「『舞姫』と『こころ』」で、鴎外の「舞姫」は1890年「国民の友」に発表された。生い立ちからドイツに留学した経験を描いている。主人公は日本への帰国船のサイゴン停泊中に留学時を振り返っている。彼は貧しい娘エリスとの恋愛がばれて帰国を命ぜられた。エリスは妊娠しているが、友人の世話で大臣の通訳となりエリスを残して帰国することになる。「こころ」は1914年に「朝日新聞」に連載された。「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の3部構成。「下 先生と遺書」が先に書かれ、この作品の主要部分となっている。鎌倉由比ガ浜で知り合いとなった「先生」は「暗い過去」があった。それは友人が愛している女性を奪ってその女性と結婚することになり、友人は自殺してしまった。それがこころの負担となって、ついに自分も自殺してしまう。両作品は学校教材となっており、受講者も若いときに読んだ方が多かった。鴎外の「舞姫」に刺激を受けて「こころ」が書かれた。「舞姫」は自我に目覚めながらも国家に縛られてゆき、「こころ」は寂しさを抱えて死んでゆく。
3回にわたり、鴎外と漱石という明治を代表する二人の大作家の生い立ちや時代の生き方、作品へのかかわり方を「交差する二人」として対照的に示して講義をしていただいた。

 受講者の言葉
・鴎外記念館の特別展と連動していてとても有意義な講座でした。これから千駄木を散策して二人の作家の研究を深めたいと思います。
・2人の生きた時代背景、国からの圧力をひしひしと感じる舞姫でした。
・講師が作品を朗読して頂いたことが大変印象的です。講師と受講者とのQ&Aが興味深く聞くことで作品と作者をより楽しむことができた。倉本講師に鴎外作品の再度の企画を望みます。
・作家そして作品別に詳細に内容を分析し、文章に潜む奥深い推理がとても印象的。また講師の文学作品は他の分野(美術や音楽)と同様に芸術であるとの言葉が感動的でした。
・一回読んで読んだつもりになっていた小説を改めて面白さに気づかされた。
・先生は「作者が何を言いたいのか?」というのはナンセンス。漱石がエゴイズムを言いたいというより、エゴイズムをどういう形で表現しているのか、そこを見るべきと言われたのに、すごく道が開かれた気分です。                                                                                                                            (糸井史郎)


   

あだち区民大学塾講座 講座開催報告

鴎外と漱石 ~交差する二人~

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