【講座開催日】2024年04月06、13、20日

4月6・13・20日(土)の3回にわたり研修室1にて開催された。講師は元農林水産省課長職の柴田寛氏。応募者は33名・受講者は31名・出席者は累計79名であった。

                          

第1回は「中国経済の変貌と課題を考える」で、GDP世界第2位の中国経済の急激な減速が日本や世界各国に大きな影響を与えていることを踏まえ変貌の現状と課題が解説された。GDPとは国内の企業が1年間に生み出した付加価値(利潤+人件費+配当)を合計したもので、日本ではサービス業が8割を占めている。中国に対する日本のGDP比率は、1990年は7.93倍、2010年は0.95倍、2023年は0.24倍となっており、日本が2010年をピークに下がるが、中国はその後成長を続け2010年に逆転した。一方1人当たりのGDPは1990年に日本が74.1倍あったが、2022年は2.7倍にまで近づいている。中国経済が減速期に入ったのは、1.建設・不動産部門の悪化2.人口減少と高齢化3.国進民退などがあげられる。鄧小平の社会主義市場経済(民進国退)により民営企業が成長したが、習近平が民進国退は社会主義の否定になるとして、国進民退に方針を転換した。

                          

第2回は「我が国の人口動向の見通しと課題を考える」で日本の長期的な人口減少の課題が解説された。日本の人口は1950年が0.84億人・2022年が1.24億人・2100年が0.74億人でピーク時の42.4%減となる。1947~49年は団塊世代と言われ出生が年間269万人となり、1970年代にその団塊ジュニア世代で増加が見られたものの、その後50年間減少が続き、2023年の出生は76万人となり、2005年には死亡数が出生数を上回り人口減少時代となった。人口減少の原因は少子化であり、結婚阻害要因として1.非婚化2.結婚コストの上昇3.晩婚化などがあり、育児阻害要因としては1.妻の育児負担2.夫の育児非協力があり、経済力要因として1.若年層の低賃金2.養育・教育コストの負担などがある。政府は異次元の少子化対策を掲げるが効果は疑問がある。スウェーデンは合計特殊出生率が日本より高く、その原因は婚外子が54.5%あり日本の2.3%と大きな差があり、移民人口割合はスウェーデン18.9%で日本は2.2%である。日本の適正人口は安倍内閣は人口1億人を目標としたが、「人口戦略会議」は「2100年の人口は6300万人とされているが、8000万人(外人10%)で安定させて成長力のある社会を目指すべき」と提言した。しかし今後も下方修正は続くと思われる。政府の少子化対策は子育て支援に偏り、肝心な結婚対策や若年層の賃金上昇が欠けている。欧米を見ると人口小国は経済弱国ではなく、日本は人口減少の呪縛から解放されるべきである。
                          

第3回は「日本の賃金の特殊性と課題を考える」で、バブル崩壊以降長期間伸び悩んでいた賃金の特殊性と課題が解説された。実質現金給与総額は2022年4月から22ヶ月連続でマイナスである。賃金は2%伸びたが食料・エネルギーなどの物価上昇は4%となり実質マイナスとなった。名目賃金は賃金が低い非正規・女性・高齢者の増加により、加重平均がマイナスとなった。しかし、正規雇用者の基本給の削減は少なかった。現金給与総額(月額)は1997年37.2万円でピークとなり、2013年は31.4万円で底を打ち、2023年は33万円で25年前の1997年よりも低い。その原因はバブルの崩壊、金融機関の貸し剥がしや貸し渋り、デフレなどで、1998年より「賃金・冬の時代」となった。その間高齢者・女性・非正規等の低賃金雇用者が増加したので、人手不足にもかかわらず賃金は上昇しなかった。企業の利益剰余金は賃金として支払われず企業内に留保された。
最後に追加資料「マイナス金利の解除とは何か」が解説された。


受講者の言葉:
・日本経済入門講座は資料、お話の内容ともに大変充実していて有意義な時間を過ごすことができました。日頃、疑問に思っていることがクリアになりました。
・経済について話を聞く機会が少ないので3日間の内容は大変興味深くよくわかった。表やグラフが多く理解するためにもよかった。難しい内容ではあるがこれから新聞やニュースなどを見る時大変 役立つと思う。日本経済についてまた講義があればよいと思います、ありがとうございました
・中国経済が減速期に入ったといわれるがやはり大国であることを講師の分かり易い話とグラフ、資料から理解できた。それにしても成長を続けるアメリカのすごさに改めて驚いた。11月のアメリカ大統領選挙によっては、日本経済もどうなっていくのか大変気になります。              (糸井史郎)



   

あだち区民大学塾講座 講座開催報告

「日本経済入門2024~中国・人口・賃金~」

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