
【講座開催日】2025年6月8日・15日・22日
「中世古文書講座~中世人の昇進・裁判」は6月8日・15日・22日の日曜日に開催されました。
講師は高梨真行氏(宮内庁三の丸尚像館主任研究員・足立区在住)
応募者は41名。受講者は第1回35名、第2回28名、第3回28名、延べ 91名でした。
現代人にとって歴史上の有名な事件や人物のエピソード、武将の活躍など、その実際や実像を直接・関接的に伝えてくれるものが古文書と呼ばれる文献です。今回は中世における制度に着目し、公家たちの「昇進」や各種の「裁判」における判決に関する古文書を取り上げ、文書行政の姿にアプローチします。

第1回「中世公家の出世願望∼申文」
【公家の昇進】(貴族の位階・官職)
律令の規定により朝廷に仕える官人(公家)は30ランクに分けられる。(位階)
【公家の家格形成と極官】天皇の成人前の代行者として政治を行う(摂政)成人後の天皇の政務を補佐する
(関白)。摂政・関白に就くことができる北家御堂流は他の公家との家格は江戸時代まで絶対的になる。般公家はそれぞれ昇進できる官位が固定(極管)。
【昇進会議】 位階は叙位儀と官職は除目でそれぞれ公家の昇進が考課される。
その叙位・除目に際して公家たちは、有力者に対し推薦文(挙状)や自己推薦文(申文)で昇進を狙う。朝廷の人事考課は功労によるので、後輩が先輩を昇進で追い越されることは恥辱であり、極官までは昇進しないと家としての面目が保てないとの意識があった。
本日の申文の古文書は、あの歌聖と知られる藤原定家です。その自筆申文は、文字を正しく伝わるように一字一字を開け、敢えて中国風の言い回しで高い教養を表して切々と昇進を訴えている。

第2回「中世人の訴訟提訴~申状」
【中世の訴訟】土地の領有や諸職などの権利をめぐっての争い(相論)は非常に多く、示談ですむことが一般であった。公家の裁判は、その地域の慣習法による判断で実像に即した公家法の整備が進められ、法解釈の専門貴族による「明法道」の成立となる。鎌倉幕府も公家法を基に武家法の基礎とした。
本講座の申状は地頭職の大河戸隆行氏が分割相続を続ける中で、所領が細分化され背景が、読み取られた。

第3回 「中世武家権力の裁判と判決―武家裁許状」
【中世の相論(訴訟)での審議】
鎌倉幕府の訴訟は、訴訟者が申状とそれを証明する文章をつけて問注所に提出する。それを評定衆が論人(被告)に対して訴状の内容を回付して通知し反論の有無を問うもので、3回繰り返す「重文章」「重陳情」と呼称され裁判は長引いた。
【裁判の種類】
1 所務沙汰 所領や年貢に関する相論・訴訟の裁判
2 雑務沙汰 所領、年貢以外の民事関係の相論・訴訟の裁判
【中世の訴訟の問題点】
武家・公家及び地方の公権力(神社・寺)にも法廷を持ち各法廷で判決が出された。
各法廷は自身の法廷での判決結果を他の法廷に通告しない。敗訴した側は違う法廷に訴訟案件を持ち込み提訴する。各法廷は自身の法に拠って受理不受理を決める。いわば中世人は、自分にとって有利な法廷を恣意的に提訴していたといえる。結果、同一案件が、数十年以上継続される事態が多発して、信長・秀吉時代の法整備まで続いた。

<受講者のことば>
・中世の昇進・裁判は現在と関係がないと思っていたが、今日まで影響があることがわかり中世が身近に感じられるようになりました。
・自分ではなかなか読むことができない古文書。先生の読み下し文や解説がわかりやすく面白い。第1回の藤原定家、歌人として有名な人物との認識しかなかったが 彼も役人として家の存続を担うための努力は好ましかった。楽しい講義を有難うございました。
・資料がとても丁寧に作られておりわかりやすかった。講義は興味深いもので良かったです。
(渡辺秀子)
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