2019年4月現在、162校の大学において社会教育主事課程が設置されており、全ての大学で「生涯学習支援論」が開講されることになる。テキストとして編まれた本は、本書が初めてのものであり、採用してくださる教員が増えることを期待している。

本書はテキストとして使用することを前提としてつくられていることから、各章の終わりには「確認問題」を掲載し、さらに「より深く学習するための参考文献や資料」も掲載している。しかしながら、市民の学習支援に関わる社会教育関係職員やNPO団体等の皆様にも、ぜひ手に取っていただくことも切望している。学習支援に関する理論的動向を学びつつ、学習支援者自身がすぐれた生涯学習者でありたい、と考える私たち執筆者の想いを受け止めていただきたいと願っている。

刊行にいたるまでには、やはりそれなりの苦労があった。事例探しから始まり、お書きいただいた原稿にコメントをつけてお戻ししたことも少なくない。「楽学の会」の取り組みである「高齢社会の学習支援ボランティアと『あだち区民大学塾』」についてお書きいただいた早坂津夜子さんにも、幾度も加筆修正をお願いした。また、4人の執筆者の間でも、お互いの原稿について意見交換を重ね、何度も書き換えた。この過程は、私自身にとっての学びそのものだった。

最後に、書きたいことがある。もう一人の編者である中村先生(本書の編集長、玉川大学教授)から、私の原稿を始めて読んだ感想として、「職員としてやられてきた実践知が文章になっていて感動した」との言葉をいただいた。この時、本書に関わって本当に良かったと実感したことが、忘れられない。

自らの体験をふり返り言葉にして書くことは、自らの思考を可視化することなのだろう。本書が社会教育・生涯学習に関わる方々にとって、少しでも意味あるものとなることができれば幸いである。

元足立区教育員会社会教育主事
「楽学の会」顧問
立教大学学校・社会教育講座 特任准教授
高井 正

本『生涯学習支援のデザイン』には事例7として、高齢社会の学習支援ボランティアと「あだち区民大学塾」
早坂津夜子さん執筆)が掲載されています
(書籍はワークルームに保管されています)

Link
『生涯学習支援のデザイン』の刊行にあたって

2019年10月01日

当会、顧問 髙井正氏よりご寄稿いただきましたので紹介します

   この10月1日、編者として関わった『生涯学習支援のデザイン』(玉川大学出版部)が刊行された。本文は編者2人と執筆者2人の4人で執筆し、そして18人の執筆者による多様な事例で構成されている。本書の特色は、何といっても内容豊かな18本の事例であり、企画の当初から、ぜひ「楽学の会」の取り組みを掲載したいと考えていた。

本書は、「生涯学習支援論」のテキストとして編まれたものである。玉川大学には通信教育課程があり、そのためのテキストが不可欠とのことから本書の刊行が企図された。このことには、文部科学省の「社会教育主事講習等規定」が改正され、2020年度から新しい社会教育主事課程がスタートするという背景がある。新課程では、「生涯学習支援論」と「社会教育経営論」が必修科目として新設され、選択科目であった「社会教育実習」が必修化されることになった。新課程修了者には、社会教育主事任用資格に加えて、「社会教育士」という称号が付与される。